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家計の「見える化」のススメ   〜「何が起きればどうなるのか」を試算する 〜

企業では年一回の決算報告を求められ、会社の状況を確認します。その時点の資産状況を表すバランスシートと年間の収支の流れを把握する損益計算書を作成し、前年度との比較や目標との差異を確認し、健全な会社経営をするための指標としています。そして、経済の変化のスピードが早い昨今では四半期ごとに決算をし、計画通り事業が進められているかのチェックを行う企業が増えています。同様に、個人でもコロナ禍の在宅生活で家計の「見える化」に取り組む人が増えています。個人で年1回の「決算」を行い、その時の資産状況と収支を見える化することで将来の不安を軽減することが出来るかもしれません。

ある共働きのお客様の加藤様(35歳仮名)はMoney Wellnessのサービスを受け、家計の四半期ごとの決算をしています。その時点の金融資産の状況はバランスシートを作成し、資産の流動資産には現預金や株式を、固定資産には貯蓄性の生命保険、年金積立などと合わせて持ち家の評価額を計上します。負債には主に住宅ローンや自動車ローンを計上し、資産と負債の差を純資産として計上します。バランスシートを作成するまでは、住宅ローン返済の負担を重く感じていて、「繰上げ返済で残債を少しでも早く減らさなければ・・・」と思っていましたが、バランスシートを作成してみると純資産が順調に増えていることがわかりました。「見える化」することで思っていたより健全な家計であることに気づき、資産の内容を見直して流動資産比率を高めることにしました。年間200万円のペースで計画していた住宅ローンの繰上げ返済の金額を減らし、浮いた金額を株や投資信託に振り分けることにしたのです。

住宅ローン返済と子供の教育費を捻出しつつ老後準備ができるのかも気になっていましたが、今後の収支と資産残高の推移を一覧表にする「将来キャッシュフロー表」の作成をすることで、未来の「見える化」ができ「今のペースで資産が増えれば大丈夫」と一安心し、住宅ローンに対する不安がなくなったと言います。

将来の家計収支と資産の推移を一覧表にする「将来キャッシュフロー表」の作成のポイントは、自分の家族それぞれの人生の節目、例えば年齢と進学時期、結婚、退職、住宅購入といった大きな予定を書き出し、具体的な収支予想を書くことです。また、自分で作るときの年収は額面ではなく手取りの金額を記入します。ここで大切なのは、収入の見通しを慎重にすることです。今までは年齢や勤続年数によって昇給する企業が多かったですが、昨今は年功序列の賃金体系を見直す動きも広がっており、慎重に見積もっておくことが必要です。

支出項目は日々の生活費と、家賃や保険料など毎月決まった支出で金額が大きいものを分けておくと、節約すべきところがわかりやすくなります。教育費や車の購入費用、定期的な旅行といった大きな支出も希望ベースで書いておくと良いです。

最後に、現在の貯蓄残高を記入します。翌年以降は収支の差額を貯蓄残高に加減していきます。教育費がかさむ時期や住宅購入時は収支が赤字になりやすいですが、貯蓄でどの程度持ちこたえられるか将来キャッシュフロー表によって見えやすくなります。貯蓄が底をつく恐れがあれば、どの支出を削るか検討が必要です。

将来キャッシュフロー表の目的は未来予測ではなく、家計の危機が訪れるとしたらいつかを探り、課題を見つけることです。教育費などは統計を参考に記入するのが一般的ですが、あくまでも現時点の数字なので、状況によって考え直す必要があります。もし収入が増えない中で子供が私立学校に進学するとどうなるか、定年退職後に再就職しなかったら貯蓄はいつごろ底をつくのかといった危険の要因とタイミングを把握すれば、節約や働いて収入を増やすといった具体策を考えることができます。不都合な真実と向き合うのは辛いですが、家計の将来について頭を整理し、子供の進学や自分の夢に向けてどのように計画的にお金の準備をすれば良いか前向きに考える材料にしていただきたいと思います。

Money Wellnessサービスでは、ご自身の未来と向き合い、その対策と伴走を行います。

不安の源は、この先どうなるかわからないこと。「何が起きればどうなるか」を試算する

将来キャッシュフロー表は、不安を軽減させる力になります。