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粒子線治療の保険適用拡大と先進医療の見直し

最近がん治療で注目されている陽子線や重粒子線などの粒子線治療。このうち、保険適用となる治療が拡大されました。

粒子線治療といえば、がんの三大治療の中の1つである放射線治療の一種です。一般的な放射線治療(X線やガンマ線)は、照射範囲が広いため、がんだけでなく正常な細胞にも影響を及ぼしてしまいます。一方で、粒子線治療では照射範囲が狭いため、がんを狙い撃ちすることができ、照射回数も少ないため体へのダメージを軽減できます。

このようにメリットの多い粒子線治療、これまでは保険適用外だったため先進医療として治療を受けた場合、治療費が約300万円と高額で患者さんにとっては大きな負担でした。

そこで、次のようにすでに一部保険適用になったものがあります。2016年4月から骨軟部がん(切除非適応の骨軟部腫瘍)、2018年4月から前立腺がんと頭頸部がん(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)、2022年4月から肝細胞がん(長径4㎝以上)・肝内胆管がん・膵がん・大腸がんの骨盤内再発・子宮がん(頸部腺がん)について、公的医療保険が適用されました。

保険適用になった場合、医療費はいくらになるのでしょうか。適用前の医療費が300万円とすると、ここから自己負担割合(1~3割)に応じた金額を病院で支払い、さらに高額療養費の対象となると、実際のコストはかなり抑えられます。具体的に、働き盛りの年代で一般的な所得者(年収370~770万円)の場合、約9万円まで抑えられるという計算になります。

ここまで粒子線治療の保険適用についてお話しました。ここからは保険適用と先進医療を比較してみたいと思います。

医療保険やがん保険に付加する先進医療特約についてご存じでしょうか。最近では、ほとんどの方がこの特約を付帯しています。先進医療特約を付帯していると、自己負担となる技術料の実費が全額保障され、さらに治療に伴う交通費や宿泊費などを賄うことのできる一時金などを受け取ることも可能です。全額自己負担になるはずだった費用がカバーできると安心して治療に専念できるでしょう。先述した例でいうと、医療費300万円として、保険適用された場合の自己負担額は約9万円でしたが、先進医療特約の対象だと全額保険から賄うことができます。

しかしながら、先進医療は随時見直しが行われており、保険契約時に先進医療であった治療が、診療時に先進医療から外れてしまっていると給付金などは支払われません。そもそも先進医療というのは、将来的に保険適用の対象とすべきか評価をしている段階です。つまり、いずれ保険適用になるか、先進医療から外れるかの2択になり、ずっと先進医療のままというわけではないのです。

どちらにしても、がん治療の考え方は変わらないため、まずは保険適用での治療を優先し、先進医療に過度な期待は禁物です。がん治療は年々進歩しており、それに伴って先進医療も変化しますので、よく理解しておくことが大切です。