社員の“期待値”は変化している ~いま企業が応えるべき、新しい「働く価値」とは~
「安定した収入があれば満足」「終身雇用で一生安心」こうした“働くこと”への価値観は、時代とともに確実に変化してきました。とくにここ数年は、コロナ禍や物価上昇、働き方改革など、社会の大きなうねりを経て、社員が企業に求めるものは「雇用」や「給与」だけではなくなりつつあります。
マネーウェルネスの導入が進む中、企業に求められるのは「金銭的な安定」を超えた、より包括的なサポートや環境整備です。この記事では、いまの時代に社員が会社に求めていることと、企業としてどのように応えていくべきかのヒントをご紹介します。
【1. かつて求められていた“会社像”とは】
かつての日本社会では、「会社が人生の保障をしてくれる存在」という考え方が一般的でした。終身雇用や年功序列のもと、会社に長く勤めれば収入も地位も安定し、退職金と年金で老後も安心という“会社依存型”のキャリアが主流だったのです。
この時代において、社員が会社に求めていたのは以下のようなものが中心でした。
・長期的な雇用保障
・安定した昇給と福利厚生
・明確な昇進・評価制度
しかし、バブル崩壊後の経済構造の変化、雇用の流動化、個人主義の浸透などにより、会社と社員の関係性は徐々に変化していきます。
【2. いま、社員が企業に求めるもの】
今日のビジネスパーソンが企業に求めるものは、単なる安定や給与ではなく、より多様で個人に寄り添った価値へと移り変わっています。マネーウェルネスのような新しい支援策が受け入れられている背景には、こうした社員の期待の変化があります。
① 経済的安心への支援
収入があるだけでは不十分と考える社員が増えており、「お金をどう守り・増やしていくか」という金融リテラシーや家計の支援に対する関心が高まっています。
マネーウェルネスのようなサービスが「安心材料」として受け入れられるのは、会社が金銭的な健康にも配慮してくれているという信頼につながるからです。
② 自己成長・キャリア支援
働くこと=会社のため、ではなく、「自分のために働く」という意識が広がっています。社員は以下のような支援を会社に求めています:
・学び直し(リスキリング)支援
・キャリアコンサルティング
・上司との定期的なキャリア面談
特にミドル層以降では「このまま今の働き方でいいのか」という悩みが強く、将来の選択肢を広げる後押しが求められています。
③ 柔軟な働き方とライフバランス
テレワークの普及により、働き方の自由に対する期待は急速に高まりました。。社員は以下の点を重視しています。
・働く場所や時間の選択肢
・育児・介護と両立できる制度
・有給休暇や副業への理解
「成果が出れば、働き方は自由でいい」という考え方を取り入れている企業は、優秀な人材の確保・定着に成功しています。
【3. これからの“人的資本投資”の形】
企業は、これらの変化にどう対応していけばよいのでしょうか。キーワードは「人的資本経営」です。つまり、社員を“コスト”ではなく、“価値を生む資本”と捉える発想が必要です。
そのために有効なアプローチを3つ紹介します。
① 健康・生活支援を包括的に設計する
健康診断やメンタルケアに加え、家計や将来設計の支援までを含めたトータルな“ウェルネス設計”が求められています。マネーウェルネスは、まさにその入り口を担うツールです。
② 上司・管理職のアップデート
変化に対応できる組織文化づくりには、管理職の理解と実践が不可欠です。「働きやすさ」「成長支援」「心理的安全性」をキーワードに、1on1やフィードバックの質の向上も重要な投資ポイントです。
③ 社員の声を可視化し、活かす仕組み
エンゲージメント調査や匿名の意見収集、社内SNSなどを活用し、社員の価値観や要望を継続的に把握することが重要です。そのうえで、「聞くだけ」で終わらせず、アクションを見せることが信頼構築につながります。
【変化する“働く価値”に、企業も進化を】
社員が企業に求めることは、「安定」から「自律・支援・つながり」へと進化しています。
マネーウェルネスのような施策は、経済的な安心だけでなく、企業の姿勢を「行動で示す」大切なサインです。いま、求められているのは、制度そのもの以上に、「社員一人ひとりの人生に関心を持ち、寄り添う姿勢」なのかもしれません。
時代とともに変わる社員の声に、柔軟に・誠実に応えること。
それこそが、選ばれる企業・働き続けたい会社の共通項なのです。