従業員の「もしも」を守る 災害への備えを福利厚生に変える健康経営の新視点
近年、日本各地で自然災害が多発し、その脅威はもはや他人事ではありません。ひとたび大規模災害が発生すれば、従業員個人だけでなく、企業の事業継続(BCP)にも影響を及ぼします。
これまで災害対策は、主に「事業継続計画(BCP)」や「安否確認システムの導入」といった側面から語られてきました。しかし今、企業が取り組むべきは、一歩踏み込んで「従業員の生活支援」という視点から災害への備えを捉え直すことです。
これは単なる企業の社会的責任やリスク管理にとどまりません。従業員の生活不安を解消し、心身の健康を支えることは、まさしく「健康経営」と「福利厚生」の新しいかたちであり、企業のブランド価値を大きく向上させる戦略的な取り組みとなります。
- 災害への備えが「健康経営」に寄与する理由
従業員にとって、「お金」と「健康」は生活の根幹に関わる大きな不安要素です。災害への備えは、この両方の不安を取り除くことに貢献します。
(1)経済的な不安の解消
災害が発生すると、自宅の損傷、長期避難、収入の途絶など、従業員は大きな経済的ダメージを受けます。企業が「災害時の金銭的な備え」を支援することで、従業員の将来的な経済不安を大幅に軽減できます。経済的なウェルビーイング(幸福)は、仕事への集中力やモチベーションの維持に直結します。
(2)精神的ストレスの軽減
災害への備えがない状態は、常に「もしも」という潜在的なストレスを従業員に与え続けます。企業が計画的な支援を行うことで、「会社が守ってくれる」という安心感(心理的安全性)が生まれ、日常生活での不安ストレスが軽減されます。これは、メンタルヘルス対策としても非常に有効です。
- 企業ができる「生活支援の新しいかたち」
災害への備えを従業員への手厚い福利厚生として機能させるため、企業が取り組める具体的な施策例を提案します。
施策1:備蓄品を「ローリングストック」で支援する
単に備蓄品を配るのではなく、「消費しながら備える」仕組みを導入します。
- 社内販売・補助: 企業が一括購入した、賞味期限が長く栄養価の高い備蓄食品(アルファ米、レトルト食品、長期保存水など)を、従業員に購入補助付きで提供します。
- 定期的な入れ替えの奨励:従業員が備蓄品を日常的に消費し、賞味期限が切れる前に新しいものを補充する「ローリングストック」を奨励。これにより、家庭内での備蓄意識が高まるだけでなく、期限切れによる廃棄を防ぎ、常に新鮮な備えを維持できます。
- (メリット: 企業は備蓄を組織的に管理でき、従業員は低コストで質の高い備えを家庭に確保できます。)
施策2:災害時「マネーシミュレーション」の実施
従業員向けのセミナーを実施します。
- 生活再建費の理解: 災害発生後、生活を再建するために平均してどれくらいの費用がかかるのか(例:公的支援、保険金、自己負担額)を具体的に学習します。
- 保険・共済の見直し相談会: 従業員が加入している火災保険や生命保険の内容が、災害時に本当に役立つのかを専門家に相談できる機会を設けます。
メリット: 従業員が自身の経済的な備えの「見える化」ができ、不安が具体的な行動(保険の見直し、貯蓄目標の設定など)に変わり、経済的なウェルビーイングが向上します。
施策3:健康維持のための「災害時持ち出しセット」補助
防災用品に「健康」の視点を加えます。
- 専門家監修のセット提供: 簡易トイレ、防寒具、ラジオといった必需品に加え、常用薬リスト、衛生用品(感染症対策)、栄養補助食品など、個人の健康維持に特化したアイテムをパッケージ化して補助します。
- パーソナル備蓄の奨励: アレルギー対応食品や乳幼児用品、介護用品など、従業員の家族構成や健康状態に合わせた「パーソナル備蓄リスト」作成を支援します。
メリット: 災害時でも健康状態を維持できるという安心感が、従業員のモチベーションを維持し、早期の業務復帰に寄与します。
- 企業ブランド価値の向上と採用への波及効果
「災害への備え=福利厚生」という新しいアプローチは、企業ブランドに以下の効果をもたらします。
- 企業姿勢の明確化: 「有事の際にも社員の生活を最優先で守る」という強いメッセージは、企業へのエンゲージメント(貢献意欲)を劇的に高めます。
- 社会貢献の「見える化」: 災害対策への積極的な取り組みは、顧客や取引先からの信頼を高め、企業イメージを向上させます。
- 採用競争力の強化: 特に若い世代は、企業の「人」を大切にする姿勢を重視します。災害時まで見据えた手厚い生活支援は、他社にはない魅力的な福利厚生として、優秀な人材の獲得に大きく寄与します。
まとめ:備えは「投資」、不安は「コスト」
災害への備えは、単なるコストではなく、従業員の「安心」と「健康」という最も重要な資産を守るための未来への投資です。
従業員が抱える災害への不安を解消することは、日々のストレスを減らし、ウェルビーイングを高め、結果として企業の生産性を向上させます。
「災害への備えも福利厚生」という視点を導入し、この新しい一年で、従業員と企業双方の未来を盤石なものにしませんか。



