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「睡眠負債」で認知症になる!?

わずかな睡眠不足が、まるで借金のようにじわじわ積み重なる「睡眠負債」。

この負債が、知らず知らずのうちに私たちの日々の生活の質を下げ、身体に重大な不調をもたらすリスクが高まっていることが明らかになってきています。

私たちはどう予防、対策をしていけばよいのでしょうか。

◼️誰にもあり得る「睡眠負債」とは

通常、睡眠不足というと、1日2〜3時間睡眠などの短時間睡眠をイメージするのではないでしょうか。このような極端な睡眠不足が続くと、私たちはストレスや疲労の影響で生活の質が低下するほか、さまざまな病気のリスクが高まることはご存知の方も多いと思います。

では普段は1日6時間睡眠をしており、自分では睡眠に問題ないと思っている人はどうでしょうか?

最近の研究では、このように自覚症状がない人も実は日々わずかに睡眠が足りておらず、その影響がコツコツ負債として蓄積されているそうです。その結果、睡眠負債がたまっていき、自分では気がつかないうちに仕事や家事のパフォーマンスが落ちてしまったり、命にかかわるような病気のリスクが高まってしまう可能性があるというのです。

◼️がん、認知症、うつ病リスクが高まる!?

そんな中、今、注目されているのが「睡眠とがん」の関係です。

2014年に米シカゴ大学が行った研究では、実験的に睡眠を不足させたマウスでは、がん細胞が増殖しやすくなることがわかりました。本来ならがん細胞を攻撃するはずの免疫細胞が、睡眠不足の場合、眠った状態になり、結果、がん細胞の増殖を手助けするような働きに転じるそうです。

実験を行った研究者は、今回の研究はマウスを特殊な方法で睡眠不足にしているので、この結果をそのまま人間の睡眠負債にあてはめられるかどうかは議論の余地があるとしながらも、人間でも同じことが起きている可能性が高いと指摘しています。睡眠負債は、免疫システムの働きに影響を及ぼし、結果としてがんのリスクを高めている可能性が見えてきました。

また東北大学が、女性およそ2万3995人を7年間追跡し、「睡眠時間と乳がんの発症リスクの関係」を調べた研究では、平均睡眠時間が6時間以下の人は、7時間寝ている人に対して乳がんの発症率がおよそ1.6倍になることがわか理ました。

もうひとつ注目されているのが、「睡眠負債と認知症のリスク」との関連です。スタンフォード大学の西野精治さん(睡眠生体リズム研究所長)らは、マウスを使った実験で、睡眠中にアミロイドベータと呼ばれる脳のごみが排出されることを突き止めました。アミロイドベータは、認知症の最大の原因であるアルツハイマー病の原因物質とも言われており、発症の20〜30年前から蓄積するといわれています。

つまり、働き盛りの時期に十分な睡眠をとっていないと、数十年先に認知症になるリスクを高める可能性があるということです。

◼️睡眠負債の返済方法

では、私たちはどのように睡眠負債を返済すればよいのでしょうか。

当たり前のことではありますが、「これまでより長く寝る」ようにすることです。

しかし「休日の寝だめ」は逆に生活のリズムが乱れてしまい、平日の睡眠に支障が出る可能性があります。専門家によれば、寝だめをすることでかえって負債を増やしてしまうリスクが高いそうです。

おすすめは、普段の睡眠時間をいまよりちょっとだけ多め取るように意識をして、週末も同じ時間をキープすることです。1日に必要とされる睡眠時間は年齢によって変わりますが、成人の働き盛りの世代であれば、1日に7~8時間程度とされています。現在の自分の生活を振り返り、睡眠が6時間以下であれば、少しでも延ばせるように生活のスケジュールを見直してみたほうがよいかもしれません。

日本人の睡眠時間は短くなり続けています。

国の調査では、睡眠時間が6時間以下の人はH20年には全体の3割未満でした。しかしH27年のデータでは4割近くに急増しています。

もちろん年代に応じて必要な睡眠時間は変わっていきますが、人生100年時代を健康に生きるためにも、健康増進テーマに「睡眠時間を意識すること」を取り上げられてはいかがでしょうか。